Google Workspace は、いまやビジネスに不可欠なコラボレーションツールです。しかし、主にオフィスで働くデスクワーカーと、店舗、製造、建設、物流、医療の現場で働くフロントラインワーカーでは、必要な機能や働き方が異なります。
「全従業員にアカウントを付与したいけどコストを抑えたい」
「現場の従業員にはBusiness エディションはオーバースペック」
そんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
Google Workspace Frontline エディションは、まさにその「現場」で働く人々が、必要な情報に安全にアクセスし、オフィスと現場をシームレスに連携するために最適化されたプランです。
本記事では、Google Workspaceの「Frontline Starter」「Frontline Standard」「Frontline Plus」の3つのプランについて比較・解説します。
各プランの概要
Frontline エディションは、全プラン共通でGmail、Chat、カレンダー、Meet、ドキュメントなどの基本アプリを含みますが、Business エディションとは異なり、ユーザーあたりのストレージが5GBに設定されています。これは、現場のスタッフが情報の「閲覧」と「コミュニケーション」を主に行うことを想定しているためです。
プランが上がるにつれて、主に「セキュリティ」「デバイス管理」「コンプライアンス」「AI」機能が強化されていきます。
Frontline Starter
最も基本的なプランです。現場スタッフが業務に必要な情報にアクセスし、チームと円滑にコミュニケーション(Chat、Meet、Gmail)を取るための基盤を提供します。基本的なセキュリティ機能は備えていますが、高度な管理機能は含まれません。
Frontline Standard
Starterの全機能に加え、現場で使用するデバイスの管理を強化したい企業向けのプランです。高度なエンドポイント管理(会社支給デバイスの制御など)や、基本的なデータ損失防止(DLP)、コンテキストアウェア アクセス(状況に応じたアクセス制御)といったセキュリティ機能が追加されます。
Frontline Plus
最上位プランであり、Standardの全機能に加え、法規制や業界スタンダードへの対応が求められる企業に最適です。最先端のセキュリティとコンプライアンス要件に対応するほか、Gmail、Chat、Meetと連携するGemini AI機能を利用できます。
各プランの比較
Frontline エディション共通で使用できる主なサービスは以下の通りです。
- Gmail
- Gemini アプリ
- Google Meet
- Google カレンダー
- Google ドライブ
- Google Chat
- Google サイト
- Google グループ
- ドキュメント エディタ
- AppSheet Core
- NotebookLM
- Google Vids(視聴のみ)
3つのプランの主な違いは、ストレージ容量ではなく、「管理」「セキュリティ」「コンプライアンス」「AI」の機能にあります。
Starter | Standard | Plus | |
---|---|---|---|
ユーザー1人あたりの月額 (1年契約の場合) | ¥520 | ¥1,360 | ¥1,800 |
ユーザー数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
ストレージ | 5GB | 5GB | 5GB |
エンドポイント管理 | 高度 | エンタープライズ | エンタープライズ |
データ損失防止(DLP) | × | ○ | ○ |
コンテキストアウェア アクセス | × | ○ | ○ |
Google Vault | × | ○ | ○ |
セキュリティ | 標準 | 強化 | 最も高度 |
Meetの最大参加者数 | 100人 | 100人 | 100人 |
Gmail、Chat、MeetのGemini AI機能 | × | × | ○ |
外部ユーザーとチャット | × | × | ○ |
※詳細な機能比較は「こちら」
各プランごとのおすすめ企業例
どのプランを選ぶべきか、具体的な企業像で見ていきましょう。
Frontline Starterがおすすめの企業
- まずは全スタッフに業務用のメールアドレスとチャットツールを安価に提供したい
- シフト情報や業務マニュアルをスマホから閲覧できるようにしたい
- 高価なライセンスは不要だが、本部と現場の連携を密にしたい
- デバイスの紛失・盗難時に、遠隔でデータをワイプ(消去)したい
コストを抑えつつ、基本的なコミュニケーションラインを確立したい場合に最適です。
Frontline Standardがおすすめの企業
- 会社支給の共有端末やスマートフォンを現場で使っている
- 特定の場所やネットワークからのみ重要データにアクセスさせたい(コンテキストアウェア アクセス)
- 万が一の訴訟に備え、チャットやメールのログを長期間保持・検索できる必要がある (Vault)
スタッフのデバイスを厳格に管理し、基本的なデータ漏洩リスクをコントロールしたい企業に向いています。
Frontline Plusがおすすめの企業
- 医療情報や金融規制など、厳格なデータ保持・管理規制に対応する必要がある
- 現場のスタッフにも広くAIを使えるようにしたい
機密情報の高度な保護と全従業員によるAI活用を推進したい企業には必須のプランです。
各プランの違いを簡潔に述べる
3つのプランの違いは、機能の「層」として理解するのが最も簡潔です。
- Starter: 現場の「コミュニケーション」を確立するプラン。
- Standard: Starterに加え、現場で使う「デバイスの管理」と「基本的なデータ保護」を追加するプラン。
- Plus: Standardに加え、現場スタッフに役立つAI機能(Gemini連携)と、より高度なセキュリティおよびコンプライアンス管理機能を追加するプラン。
Frontline エディション導入時の注意点
Frontline エディションはコスト効率を最適化したい企業にとって非常に有益なソリューションですが、BusinessやEnterprise エディションとは異なる前提条件があります。導入前に以下の3点を必ず確認してください。
1: Google ドライブ
Frontlineの全プランは、ユーザーあたりのストレージ容量が5GBに制限されています。これは、大容量ファイルを保存・編集するのではなく、情報の閲覧とコミュニケーションを主目的としているためです。
また、共有ドライブ内でのファイルの作成・アップロードはできず、閲覧のみ可能です。
2: 他のエディションとの併用
通常、Google Workspaceは1つのドメインで複数プランの混在はできませんが、Frontline エディションは単体では契約できず、他のGoogle Workspace エディション(Business Standard、Enterprise Plusなど)との併用が必須です。
3: 資格要件
Frontline エディションは、「現場スタッフ」として定義される従業員のみが対象となります。ライセンスの購入・割り当てには、Googleまたは販売パートナーによる資格要件の確認が必要となります。
※資格要件の定義については「こちら」
現場とオフィスをシームレスにつなぐ
Google Workspace Frontline は、現場のスタッフをデジタルで繋ぎ、業務効率とセキュリティを両立させるための、コスト効率に優れたソリューションです。
Business エディションのようにストレージ容量で選ぶのではなく、自社の「セキュリティポリシー」「デバイス管理の要件」「コンプライアンス(法令遵守)の必要性」を軸にプランを選定することが重要です。
自社の現状を見極め、最適なプランで「現場力」を最大化しましょう。